2015年8月5日水曜日

“とてもいい映像”こと「The Kids Are Alright /キッズ・アー・オールライト」

左から「The Kids Are Alright」「Tommy」「Rock 'n' Roll Circus」 
左から「The Kids Are Alright」「Tommy」「Rock 'n' Roll Circus」のDVD


つい先日、8年ぐらい前からずっと更新をしていなかったポッドキャストブログを閉鎖しました。
アカウントを消してから、ほかに消し去らないといけないものはないか、用心のためURLを検索したら、とある記事に見知らぬ人が「おもしろい」と言及してくれているのを発見。
うれしくてつい調子に乗ってキャッシュを漁っていたら、当時放映されていた超大手有名携帯キャリアのCM(そろそろ反撃してもよかですか?みたいなの)に噛みついているパンクな記事が出てきたりして、若いな!(その時点で30超えてるのに)と思いました。

そんなブログのサイドバーにはってあった、何のひねりもないアマゾンリンクの見出しと、パンクなブログ内容とのギャップに、我ながら脱力しました。

とてもいい映像 ピート、かっこいいよ、ピート 
↑アマゾンリンクではありません、キャプチャ画像です↑


ただ、このTHE WHOというロックバンドのドキュメンタリー映画「The Kids Are Alright」が“とてもいい映像”なのは紛れもない事実です。

ここでおさらい「THE WHO」とは…

  • Vo.ロジャー・ダルトリー
  • Gt.ソングライター、ピート・タウンゼント
  • Ba.ジョン・エントウィッスル(十数年前にコカイン摂取→心臓発作で他界)
  • Dr.キース・ムーン(32歳にオーバードーズで夭逝)
キャリアは半世紀に渡る、生ける伝説となった、英国を代表するロックバンド。
代表作は「マイ・ジェネレーション」「ロックオペラ トミー」「フーズ・ネクスト」「四重人格」など。
トミーはケン・ラッセル監督に、四重人格は「さらば青春の光」として映画化されている。

「モンタレー・ポップ・フェスティバル」「ウッドストック・フェスティバル」にてギター、ドラムを破壊し、音響機材を爆破する狂気のパフォーマンスは伝説となっている。
なお初来日公演となった「ロック・オデッセイ」でも、ピートは全盛期を彷彿とさせるギター破壊のパフォーマンスを行い、日本の観客を熱狂させた(←含む私)。 
機材に火薬を多めに仕込んだキースのいたずらにより、爆風がピートの鼓膜を直撃。以来ピートは難聴に悩まされることとなる。 
デビューから50年を経てなお現役。
近年はピートの弟や、リンゴ・スターの息子にもかかわらずキース・ムーンスタイルを伝承した奇才ザック・スターキー(ex. OASIS)をドラムに迎えて活動を続けている。

何がすごいって、この映画を見た、ドラマーのくせに一番目立つ男ことザ・フーきっての狂犬キース・ムーンが

「俺ってこんなクレイジーだったのか…」

とひどく落ちこんでしまい、結果オーバードーズして死んじゃった、それぐらいにトチ狂っています。

キース・ムーンと、親友リンゴ・スターも含めた、愉快、痛快、破天荒な姿を見てゲラゲラ笑っていたら、当の本人が

「こんなアホみたいなパブリック・イメージ守り続けるのムリ!」

と青ざめて死んじゃったんですから驚きます。

そういった経緯もあるので、たまにこの映画を見返していると、とてつもなくクレイジーなのに、ちょっと泣けてきてしまうのです。
とくにキース在籍末期に撮られたPV「Who are you/フー・アー・ユー」における、キースのとびきりの笑顔には、毎回必ずメンタルをやられます。
なんで死んだんだよ馬鹿野郎!無邪気に笑いやがって!かわいいじゃないかこんちくしょう!って。

ストーンズが「俺らよりフーの方が目立ってんじゃん!」と「Rock 'n' Roll Circus /ロックンロール・サーカス」の映像を丸ごとお蔵入りさせた元凶ともいえる、伝説の「A Quick One, While He's Away/ア・クイック・ワン」(四者四様に超絶カッコイイ!!!)が入っていたり、


見どころはたくさんあるのですが、まずは


  1. ドラムなのに一番目立つ男、キース・ムーンのトチ狂いっぷりと躍動感溢れるドラミング+リンゴ・スターとのすっとぼけたコンビネーション
  2. 二番目に目立つバンマス、ピート・タウンゼントのウィンドミル奏法、人殺し寸前の怒りの表現、破壊の限りを尽くす刹那的なステージング、跳躍力、繊細で神経質で苦悩に満ちた表情
  3. 直立不動すぎて逆に目立つ、手先以外微動だにしないジョン・エントウィッスルの超絶技巧ベース、ニヒルな微笑み、だみ声からファルセットまでこなすコーラス能力の高さ
  4. ロジャー・ダルトリーの面白歌唱

このへんにご注目ください。
(こうして書き出してみると死に方含めてジョンが一番変態…)

ボーカルのロジャーをオチに使ってしまって大変失礼なのですが、ニワカファンの私がロジャーのよさを身にしみて理解できたのはキースとジョンがいなくなって初来日公演を見てからだったので、何卒ご容赦ください。
ロジャーの何が素晴らしいって、メンバーがセックスだドラッグだアルコールだと享楽に溺れているさ中、喉を守るためドラッグには一切手を出さなかった、そのストイックさとボーカルとしてのプロ意識の高さです。
今となっては当たり前の意識なんですけど、その当たり前が通用しないのが当時のフーを含めた音楽業界の特異さで、ロジャーの真人間ぶりが際立っています。


The Who: The Kids Are Alright - ザ・フー


ロジャーの魅力はピート・タウンゼント原作のロックオペラ「TOMMY」の方が堪能できます。

Tommy (Deluxe Edition) - ザ・フー


初来日で衝撃だった「Won't Get Fooled Again」間奏中における眼力が、この映画にも登場します。
「三重苦の青年」を目線一発で体現しきる男・ロジャー・ダルトリーなのですが、その後目立った俳優活動がないのは何故なのか。ケン・ラッセルの演出がすごかっただけなのでしょうか?
ちなみにそのシーンには怪しげな宗教の伝道師としてエリック・クラプトンと、そのバックバンドとしてフーの残り3人も出演。
クラプトンの激渋ボイスと、テディベアを分解して作った付け髭(ソース:オーディオ・コメンタリー)が見どころです。

■関連リンク(「TOMMY」の話をするのは今回で3回目)

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